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誰にも教えたくないレコードを聴く

アマチュア・オーケストラでヴィオラを弾いています。 過ぎ去りし日、森の中でクナッパーツブッシュのブルックナーの「ロマンティック」交響曲を聴いてこの世界に入りました。一曲を徹底的に聴き比べます。


モーツアルトの弦楽四重奏曲第14番ト長調K.387。
さらりと終わる快調な終曲を聴いていると、
もしカルロス・クライバーが棒を振るとしたら、
ハイドンセットの中ではこの曲を選ぶんだろうなと思う。

こういう演奏が安価でCDで聴けるようになるとはいい時代になったものだ。
ファースト・ヴァイオリンのボッセ、セカンドのズスケ、
めちゃくちゃいい!


今年もまもなく終わり。
これまでやってきた仕事内容が変わり落ち着かない一年であった。
音楽体験も今年はお寒い限り。
それでも、ブルックナーとともにあった前半はとても幸せだった。


私の2008年10大ニュース<音楽編>
 1 ブルックナーの第4を演奏したこと。
 2 ブルックナーの第4を100種類聴き素晴らしいディスクに出会えたこと。
 3 マタチッチ/プラハの幻のブルックナー第8を聴いたこと。
 4 メンデルスゾーンのスコットランド交響曲の聴き比べをしたこと。
 5 名ソプラノ、トルーデ・アイッパーレを発見できたこと。
 6 ウルブリヒQのモーツアルト五重奏曲のエテルナLPを手に入れたこと。
 7 フルトヴェングラーのトリスタン、FALP初版を買えたこと。
 8 クナッパーツブッシュのヴァルキューレ1幕、独デッカSXLを買えたこと。
 9 飯守さん渾身のシティフィルのトリスタンを聴いたこと。
10 ヴィオラの名手、アタール・アラッドを発見できたこと。
番外 原田康子氏の小説「いたずら」で、カラヤン/ウイーンフィルによる日本公演
   (ブルッックナーの8番)が出てきてびっくりしたこと。


Biddulph Records LAB089/090
Flonzaley String Quartet

ハイドン(ホフシュテッター)
弦楽四重奏曲ホ長調Op.3/1~第3楽章 Andantino grazioso
弦楽四重奏曲ヘ長調Op.3/5~Andante cantabile (「セレナーデ」)

ハイドン
弦楽四重奏曲第53番ニ長調Op.64/5「ひばり」
弦楽四重奏曲第59番ト短調Op.74/3「騎士」~第4楽章 Allegro con brio

モーツアルト
弦楽四重奏曲第15番ニ短調K.421
弦楽四重奏曲第21番ニ長調K.575「プロシャ王1番」

ベートーヴェン
弦楽四重奏曲第4番ハ短調Op.18/4~第3楽章 Menuetto: Allegretto
弦楽四重奏曲第6番変ロ長調Op.18/6~第3楽章 Scherzo, Allegro
弦楽四重奏曲第2番ト長調Op.18/2
弦楽四重奏曲第12番変ホ長調Op.127
弦楽四重奏曲第16番ヘ長調Op.135

1926-29年録音


実に心地良い歌!
おだやかな気持ちにさせてくれる。



弦楽四重奏しか聴かない!というマニアが書いた文章の中で次のような表現に出会う。
「誰にも教えたくないレコード」
「このレコードで初めてこの2曲の良さを知った」
「好きなレコードをたった1枚あげるとすれば、これ」
「初めはカペーそっくりだが、次第に誰も真似のできない凄まじい演奏へ変わっていく」
「この2曲でこれより優れたレコードはない!」
・・・この人の文章や、室内楽曲におけるレコードへの考え方はとても説得力があるので、
ここまで書かれると、聴かざるを得ないということになる。

少し前に、無理して米フィルハーモニア社というナゾのレーベルのLPを手に入れたが、
CD化されてしまった!LPは状態が完璧でなく、再生が難しいこともありCDも購入することに。

BRIDGE 9137
○マリピエロ:弦楽四重奏曲第1番"Rispetti e Strambotti"(21:19)
          1950年7月26日、8月9日、16日録音
○ドビュッシー:弦楽四重奏曲ト短調作品10(26:00)
          1951年5月15日録音
○ラヴェル:弦楽四重奏曲ヘ長調(27:52)
          1951年4月24日録音
○アラン・シャルマン:クラリネットと弦楽四重奏とのランデブー(4:48)
          1946年8月19日録音
ストゥイヴサント四重奏団
(シルヴァン・シャルマン、バーナード・ロビンス、ラルフ・ヘルシュ、アラン・シャルマン)
ベニー・グッドマン(Cl)


作曲家でもある同団のチェリスト、アラン・シャルマンの息子がプロデュースしたCDだけに、
音源の選定に神経が行き届いている。マスターテープはすでに失われているため、ラヴェルは
コピーテープから、ドビュッシーは市販されたテープから、マリピエロはノンサッチのLPから
音を採っている。いずれもクリアーで力強い音だが、特にラヴェルは鮮度が高く音が輝いている。

前述のマニアも、
「この楽団の詳しい経歴はわからない」
と書いていたが、
このCDの解説により、ストゥイヴサントQの経歴や詳しい録音年月日・場所、
フィルハーモニアレーベルの正体などが明らかになったことは嬉しいことだ。

この四重奏団の良さは、
・ヴィオラとチェロが強力で、生々しくくっきりとした音で存在感を示していて、音楽があいまいに
ならず明確に進行していること。
・速めのテンポながら、どの小節もハイテンションで、ざわざわした感じや切迫した雰囲気が濃厚。
といったところで、
確かに超個性的なサウンドで、ドビュッシーのざわめきやラヴェルの2楽章の勢いなど、他では
聴けない素晴らしい演奏ではある。
ただ、唯一絶対盤とまで言い切れるかというと、そうでもないような気もする。
この2曲は、いろいろ聴き込んでいるわけではなく、演奏を聴いてそれほど感激したことも
ないのでなんとも言えないが、清潔系で渋い名演が他にもあるのではないだろうか。

再発LP(ノンサッチ=疑似ステレオ)があるとはいえ、幻の演奏であり、まさに待望のCD化であった。
苦労してLPを手に入れたのに、あっさりとCDが出てしまって複雑な気分だが・・・

時間があったのでゆっくり室内楽のレコードを聴く。

○モーツアルト 弦楽五重奏曲第4番ト短調K.516
 アマデウスQ、アロノヴィッツ(va)

○ハイドン 弦楽四重奏曲ト短調Op.74-3「騎士」
○スメタナ 弦楽四重奏曲ホ短調「我が生涯より」
 ヴラフQ

「騎士」はこの演奏で聴くと特に面白い。第2楽章がたいへん濃厚な歌で、第4楽章も思わず体が動いてしまう。スメタナは圧倒的な名曲。このヴラフQ、思い入れの激しい壮絶とも言える演奏。ヴィオラのコドウセクの存在感が強烈!終楽章の例のEの高音はそれほど強調していない。スコアを見るとffではなくてfなのでこの方がいいのかも知れない。K.516はいい曲だが、このLPは国内盤で音が冴えない。

おまけ・・・
○ハイドン 交響曲第39番ト短調
 ゴールドベルグ指揮オランダ室内管
フィリップスの7インチ盤。45回転のモノラル盤。シングル盤に1曲収まっている。
終楽章の内声のキザミがとても良い!


Paul Hindemith(1895-1963)
Ouvertüre zum „Fliegenden Holländer“, wie sie eine schlechte Kurkapelle morgens um 7 am Brunnen vom Blatt spielt, für Streichquartett (um 1925)
ヒンデミット
「朝の7時に湯治場で二流楽団が初見で演奏する『さまよえるオランダ人』序曲」

Buchberger Quartett 7:31
Hubert Buchberger, Vn1
Julia Greve, Vn2
Joachim Etzel, Va
Helmut Sohler, Vc
1990
Wergo WER6197-2
w. Minimax / Quintett für Klarinette und Streichquartett

二十世紀ドイツを代表する作曲家。アマール弦楽四重奏団のヴィオラ奏者としても活躍した。前期には「新即物主義」と呼ばれる、音楽から思想や主義主張を排除した純粋な音の喜びを求める作品が多く、後期には古典的な格調を意識した作品が多い。前者の代表としては、この弦楽四重奏曲「午前7時に湯治場に集まった二流楽団が初見で演奏した《さまよえるオランダ人》序曲」、後者の代表としてはオーケストラ作品「画家マチス」が挙げられるだろう。第二次大戦時にはナチスの「頽廃芸術」との刻印を捺され、国外逃亡を余儀なくされた。理論家としても「作曲の手引き」を執筆し、作曲理論にも大きな影響を与えている。

このほか、2種のソフトがある・・・
Kocian Quartet 7:47
Pavel Hula, Vn1
Jan Odsrcil, Vn2
Zbynek Padourek, Va
Vaclav Bernasek, Vc
1995
Praga PRD113-115
w. Hindemith Complete Quartets

Leipziger Streichquartett 7:37
Andreas Seidel, Vn1
Tilman Büning, Vn2
Ivo Bauer, Va
Matthias Moosdorf, Vc
2005
MDG 307 1362-2
w. Encores

最初のブッフベルガーQが最も良い。
1拍早く終わって、「あっ、やべえ。まあいいか。」という感じが良く出ている。
次いでコチアンQ。ファーストヴァイオリンの音に色気があり、いかにも、
ヴァイオリン優位の「二流楽団」という感じである。
ただ、パロディー度ではブッフベルガーQに長があるようだ。

そもそも、なぜ、「オランダ人」なのか?
・・バイロイトの映像で、この序曲をスイトナーがリハーサルしているものがあった。
グラインドルとスチュワートが椅子に腰掛けてスイトナーを睨みながら、
たいへんスリリングな練習をしている。
しきりに「ここの弦楽が問題・・」などと言っているが、
きっとヒンデミットもどこかのオケで「オランダ人」の練習を見て、
弦の難しさ、合わせにくさ、めちゃくちゃになったときの官能的なまでの面白さに感動したのだろう。

最後にジプシー風ポルタメントを伴い、「スケーターズワルツ」が唐突に出てくる。
会心の名作だ。