誰にも教えたくないレコードを聴く

アマチュア・オーケストラでヴィオラを弾いています。 過ぎ去りし日、森の中でクナッパーツブッシュのブルックナーの「ロマンティック」交響曲を聴いてこの世界に入りました。一曲を徹底的に聴き比べます。

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第4「ロマンティック」における「ハース版」と「ノヴァーク版」の違いを、ノヴァーク版での変更点を視点にチェックした。(ページ数は両版共通)


第1楽章(P.3~P.52)

①P.4、19~38小節、メロディーにオーボエ2本追加
 第1主題の増強が目的。実演ならオーボエ奏者を見ればわかるが、録音で判別するのは困難。 

②P.29、297小節からのヴィオラ、ffに変更。(ハース版はmf)
 弦はいじらない、という方針だったはずなので、この変更は意外!ホルンの主題にからむ、ヴィオラの
素晴らしい対旋律をより浮かび上がらせるための変更。ヴァイオリンのトレモロがmfでホルンがfなので、ヴィオラがffというのは効果的だが、あくまでバランスの問題で、ホルンとヴィオラが互いに聴き合ってバランスをとれば良いことである。105小節で全体がffになるので、ハース版のままで構わないと思う。ただ、このヴィオラの出が弱いとだめなことは事実。演奏でどのように弾くかは指揮者やオケによって様々なので、聴いて判別することは困難。ただ、ffの場合アクセントっぽく弾かれ、mfの場合なめらかに入るという傾向は窺える。

③P.33、385小節からの1番オーボエ、フルートと同じメロディーに変更。
(ハース版は2番オーボエと同じ反行形)
 反行形が出過ぎないための変更。ハース版でも主題がフルート2、クラリネット2なのに対して、反行形がオーボエ2の「4対2」になっており、わざわざオーボエ1本を主題に回して「5対1」にする必要はないだろう。6人がバランスを取り合って吹けば問題なしである。聴いて判別するのは無理。

④同、397小節のチェロ、F音に変更。(これはおそらく誤植。ハース版はA)
 これは、有名な誤植で、このページで上記③をいじったことによって、ここがおかしくなったと思われる。Fでは気持ち悪くありえない。Fでやってる演奏ってあるのだろうか?


第2楽章(P.53~P.76)

⑤P.59、101小節からのホルン、1本から2本に変更。(ハース版は1番ホルンのみ)
 第1主題を吹くホルンの増強。mfでヴァイオリン、ヴィオラとホルンが絡み合う素晴らしい音楽。よほどしょぼく吹かない限り、1本で問題ない。2本ででかく吹きすぎてヴァイオリンとヴィオラを消してしまったら、また、ヴァイオリンとヴィオラがホルンに対抗して大きく弾きすぎたら最悪。聴き取るのは難しい。

⑥同、105小節から、1番トランペットもmfでメロディーに追加、1番クラリネットは1オクターブ上げる。
 上記と同様の補強策。トランペットの有無は比較的判別しやすい。上記同様いらぬ変更だろう。ここはまだf一個なので、木管は互いに聴き合い最適なバランスをとるべき。

⑦P.67、193小節(M)のクラリネット、1本から2本に変更。(ハース版は1番クラリネットのみ)また、3、4番ホルン、トロンボーン、テューバの1拍目の四分音符削除。
 第1主題の補強。四分音符の削除は、弱音器付き弦楽器と主題を吹く木管の入りを邪魔しないため。ここは立ち止まっていたものが静かに動き出す素晴らしい部分。ヴァイオリンがpで、mfの主題はホルン2本もいるのだからクラリネットは1本で問題ない。四分音符の方は削除するべきか。直前3小節のコラールとは全く別の音楽が立ち上がるわけで、ここで四分音符を鳴らす必要性が分からない。ハース版でもほとんど聞こえない(吹いてない)演奏も多い。版の違いなのか、演奏上の工夫なのか判別することは困難。

⑧P.69、205小節から208小節までの2番クラリネット削除。
 追加が多い中、削除は珍しい。ここはpの静かな音楽で、フルート2本が一緒に吹いており、クラリネットは1本でということなのだろう。バランスの問題なので、現場でいくらでも調整可能。聴き取ることは困難。

⑨P.70、209小節(O)からの2番クラリネット、オーボエと同じ四分音符の音型に変更。また、213小節から、その四分音符の音型にファゴット追加、2番オーボエもメロディーから四分音符の音型に変更。
 ここは、やや複雑な変更箇所。まず、第1ヴァイオリンがスラーとスタカートの交替する動きのあるメロディーを弾く。次に重要なのが、四分音符の進行だが、この進行を補強することが主眼である。変更前に担っていた附点四分音符+八分音符の音型はさほど重要でなく、これが大きすぎてはいけないことは確か。ただ、やはりバランスの問題で、各声部を指揮者がコントロールして奏者も十分理解して演奏すれば問題ない。四分音符の進行は、ヴィオラやチェロがピチカートで同じ音型を弾いており、それに乗っかって吹けば十分。耳で判別するのは難しいだろう。


第3楽章(P.77~P.99)

⑩P.96、247小節のトランペットにhervortretendの指示追加。
 これはよく分からない。前へという指示だろうが、トランペットだけというのもナゾ・・・

⑪P.98、トリオ冒頭のメロディーをオーボエからフルートに変更。
 これが最も有名な違い。これで版が判断できるなら楽だが、そうはいかない。同じ「ハース版」でも、初めに出た1936年のスコアはノヴァーク版と同じフルートになっており、オーボエに変更されたのは1944年の再版でのことである。オーボエにする資料的な根拠は現時点でみあたらず、素朴な響きがよい、という理由のみでこれを採用するのはどうかと思う。やはり、ハースでやるならヴァントのように1936年版か。

⑫P.99、37小節にrit.の指示追加。
 このリタルダンドのある・なしは比較的聞き分けやすいが、ハース版使用でもリタルダンドしている演奏も多く混乱する。流れでいえばしたいところであるのは事実。これはもう少し聴き比べて考えてみたい。


第4楽章(P.100~P.152)

⑬P.105、51~54小節のフルート、オーボエ、クラリネットの音型をヴァイオリンと同じものに変更。(ハース版はホルンと同じ音型)
 音程の跳躍を含む6連音符は非常に印象的で、これを強化するための変更。管楽器が入るか入らないかなので、比較的聞き分けやすい。ハース版でも、ffとはいえ、管楽器がバランスを考えておさえめに吹けば問題ないし、ここはヴァイオリンだけにしておいて、あとで(Eで)みんなでやる方が良いと思う。

⑭P.124、249小節から1番オーボエ追加。(フルートと同じメロディー)
 フルートの主題を補強する変更。弦はpだし、フルートだけでも十分だと思うが、もしかすると音色を単一の楽器でなくブレンドしたものにしたかったのかも知れない。判別は困難。

⑮P.125、261小節から1番クラリネット追加。(第2ヴァイオリンと同じ旋律)
 主旋律は1番オーボエの下降形。反行する上昇形は第2ヴァイオリンが弾くが、これを補強するための追加。音量よりも、弦と管より木管同士の方があわせやすい、という理由だろう。これはなんとか判別できるか。理解してアンサンブルすれば問題ないと思う。

⑯同、267~268小節の音型、1番オーボエから1番クラリネットに変更。
 前記のついでに変更したものだろうか。音色的にクラリネットの方を選んだということだろう。ppで弱音なので判別は困難。

⑰P.152、533小節(Z)から3、4番ホルン及びトランペットは附点つきのメロディに変更。(ハース版は全音符)
 ブルックナー指揮者、朝比奈隆氏は、「ハース版とノヴァーク版の違いはここだけといってよい。」と述べている。全曲の最終ページ、第1楽章の第1主題が帰ってくる頂点の音楽。意図は明瞭で、リズムはトロンボーン、音程は全音符のホルン(3,4番)、トランペットと役割を分け、合わせてはじめて主題が浮かび上がってくるしかけのハース版に対し、より明確に主題が聞こえるようホルン、トランペットがリズム付きで主題を吹くように変更した。トランペットの16分音符に着目すれば判別可能である。
 何度も直して、ようやくできたこのフィナーレ。他の交響曲とは違って、暗く、何か切ないこの終わりの部分は、ハース版の透かし彫りのようなスコアの方が好ましい。きちんとバランスを考えて演奏すれば、主題もきちんと浮かび上がってくる。何でもはっきり聞こえればよいということはないだろう。
ちなみに、改訂版第3稿は、音程の上下がなくリズムのみなので、主題回帰が分からず問題である。

⑱4/4表示の追加(P.109、93小節(B)、P.119、183小節(F)、P.125、269小節(K)、P.141、413小節(Q)=Im früheren Zeitmaßの表記も追加)
⑲¢(2/2)表示の追加(P.114、155小節(E)、P.121、203小節(G)、P.127、295小節(M)、P.147、477小節(V))
 拍子記号の追加。ハース版ではフィナーレを通して¢(2/2)ということになる。これは、演奏現場で指揮者が1小節を2つで振るか4つで振るかを明確に示したものといえる。6連音符が入るようなリズミカルなところは¢(2/2)で、静かな部分や歌う部分は4/4ということになっている。おかしな指示ではないと思うが、指揮者によっては¢(2/2)を速く演奏しすぎるという危険性がある。決してイケイケの音楽ではないはずだ。ハース版でも、楽章を通して完全なインテンポというのはナンセンス。ブロックごとに適切なテンポが選択されるべきである。その場合、四角四面に2通りでくくることは音楽を硬直させることにつながりかねない。もちろん、実際の演奏で記号について判別することは不可能。


フィリップス 412735-2
ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」(第2稿ハース版?)
(20:39/15:27/10:37/21:46)
ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
ベルナルト・ハイティンク指揮
1985年2月、ウイーン、ムジークフェラインザール


ハイティンクは随分顔でソンをしていて、ブルックナーで威厳のある高貴な演奏などできるはずない、という感じで評判が良くない。が、これが出たとき、ウイーンフィルならと思って買って聴いたら、
とても良く、一時は随分聴いたものだった。

久しぶりに取り出し、スコアをみながら、ハース版使用がわかるかどうか聴いてみた。

第1楽章のポイント②、ヴィオラはmfっぽい感じ。
第2楽章のポイント⑥でトランペットは吹いていないようだ。
ここまでは順調にハースだ。
⑦の1拍目の四分音符は聞こえない。これは版なのか演奏上の工夫なのか分からない。
第3楽章のポイント⑪、ここはオーボエとクラリネットのようだ。しかし、⑫のrit.を
はっきりとやっているのだ!
第4楽章のポイント⑬はヴァイオリンだけなのでハース。
⑮の反行する上昇形は第2ヴァイオリンだけである。
そして、何と、最終ページの⑰は、3、4番ホルン及びトランペットは附点つきの主題を吹いているのだ!????
⑱に関して、フィナーレを通じてゆったりとした堂々たるテンポで貫かれており、2つ振りで速くなるということはない。
⑫と⑰は完全にノヴァーク版の特徴であり、すっきりしないが、考えてみれば、ウイーンフィルは70年代からカール・ベームの指揮でノヴァーク版を演奏したりしており、楽団の伝統、パート譜ということもあるのだろう。なにがなんでもこの版!とこだわる指揮者も少ないだろうし、演奏内容が良ければいいわけだから、ハース版をベースにしながら適切に取捨選択したといっていいだろう。

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