誰にも教えたくないレコードを聴く

アマチュア・オーケストラでヴィオラを弾いています。 過ぎ去りし日、森の中でクナッパーツブッシュのブルックナーの「ロマンティック」交響曲を聴いてこの世界に入りました。一曲を徹底的に聴き比べます。

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ヴァーグナー家の若き才女、カタリーナ・ヴァーグナー新演出の話題の公演初日だ。
マスコミへのリハーサルの公開に際し、第3幕だけはシークレットとして非公開にするなど、
なかなかのやり手である。

コンセプトも個性的。
ザックスとベックメッサーの生き方の変化に着目したそうだ。
ザックスは初めは自由を尊ぶ話のわかる親方、裸足で登場するのだそうだ。
ベックメッサーはスーツ姿で文庫本を手放さず堅苦しい規則遵守のキャラクター。
それが、
第2幕の騒乱を経て一晩寝ると、
ザックスの方が、ドイツ芸術を守る保守的な親方に、
ベックメッサーはTシャツ姿で自由に思考する前衛芸術家に変貌する。
立場が入れ替わるわけだ。
なるほど。


「楽劇“ニュルンベルクのマイスタージンガー”」ヴァーグナー作曲
               (第1幕:1時間24分56秒)
                  (第2幕:59分45秒)
               (第3幕:1時間59分31秒)
    ハンスザックス(くつ屋)…(バス)フランツ・ハヴラタ
   ファイト・ポーグナー(金細工師)…
                (バス)アルトゥール・コルン
   クンツ・フォーゲルゲザンク(毛皮屋)…
               (テノール)チャールズ・リード
   コンラート・ナハティガル(ブリキ屋)…
                 (バス)ライナー・ツァウン
   ジクストゥス・ベックメッサー(市役所の書記)…
                 (バス)ミヒャエル・フォレ
 フリッツ・コートナー(パン屋)…(バス)マルクス・アイヒェ
   バルタザール・ツォルン(すず細工師)…
              (テノール)エドワード・ランダル
   ウルリヒ・アイスリンガー(香料商人)…
           (テノール)ハンス・ユルゲン・ラザール
   アウクスティン・モーザー(仕立て屋)…
            (テノール)シュテファン・ハイバッハ
ヘルマン・オルテル(せっけん屋)…(バス)マーティン・スネル
ハンス・シュワルツ(くつ下屋)…(バス)アンドレアス・マッコ
ハンス・フォルツ(銅細工師)…(バス)ディオゲネス・ランデス
   ワルター・フォン・シュトルチング
     (フランケン地方出身の若い騎士)…
        (テノール)クラウス・フロリアン・フォークト
   ダーヴィット(ザックスの徒弟)…
             (テノール)ノルベルト・エルンスト
   エヴァ(ポーグナーの娘)…(ソプラノ)アマンダ・メース
   マグダレーネ(エヴァのうば)…
            (メゾ・ソプラノ)カローラ・グーバー
           夜警…(バス)フリーデマン・レーリヒ
                            ほか
                (合唱)バイロイト祝祭合唱団
              (管弦楽)バイロイト祝祭管弦楽団
             (指揮)セバスティアン・ヴァイグレ
  ~ドイツ・バイロイト祝祭劇場で収録~
                   <2007/7/25>
  (バイエルン放送協会提供)


美人演出家による新演出の期待と不安、バイロイトの実験精神と伝統、それらがぶつかり合うザワザワした雰囲気がそこここに感じられるスリリングな記録。
華美でない祝祭劇場にこの曲は合わないのか、また、ヴァーグナー家の孫の演出が悪かったのか、
実験精神に曲が合わないのか、はたまた指揮者がいかんのか、バイロイトでは名声を残す名舞台がないのだが、今年の「マイスタージンガー」、素晴らしかった!

前奏曲。四分音符が短めで深みや重さがなく、おいおい大丈夫か?と思わせるが、
中間部でゆったりとしたテンポをとるあたりからいい雰囲気になってくる。
オーケストラコンサートではないのだから、所詮は前奏曲、力が入り過ぎなくて良い。
そもそも、このオペラ、3管でなく2管編成の管弦楽で、巨大な音量や迫力、かっこよさではなく、
室内楽的な線のからみや全音階の美しいハーモニーが美点なのである。

オペラは歌が主役。歌がつまらなければ台無しである。
この上演では、男性陣が皆素晴らしく、歌の動きに管弦楽がつけていくオペラの醍醐味が味わえる。
親方衆は、ステキなおじさま揃いだ。
深く威厳のある声のポーグナーのコルン。
フランツ・ハヴラタの歌うザックスはさらに素晴らしく、余韻に甘い響きを残すたいへん美しい声で、旋律の美しさが際だっている。
ベックメッサーのミヒャエル・フォレも良い。前述の演出方針から、第3幕で衆目に嘲笑される歌合戦での歌は、マヌケで変な歌を歌ってしまうという一般的な設定でなく、前衛芸術家として意図的に挑戦的な歌を披露する、という設定なので、ベックメッサー史上最強の素晴らしさと言ってよい。「ベックメッサー復権」と言われたヴォルフガング・ヴァーグナー演出のヘルマン・プライも振る舞いはよかったが、歌自体はここまで決まっていなかった。歌詞はそのままなので、変な歌であることは変わりがないが、ヴァーグナーが書いた音符を最高に音楽的に歌ったものといえる。

そして、圧倒的に感銘を受けたのが、シュトルツィングのクラウス・フロリアン・フォークトの歌だ。
明るく、甘く、旋律的で、音のよく持続する素晴らしいベルカントの声で、聴き手を惹きつける。
英雄的で深刻なヘルデン・テノールではなく、こういう声がこの役にはピッタリだ。
昔のコーンヤやコロよりもいいかも知れない。非常に率直というか、カッコをつけている感じが全くないのが好ましい。優勝歌など、じっくりとしたテンポで本当に感動的だ。

エヴァのアマンダ・メースは、よく通る声だが、幾分ヒステリック。おだやかなかわいさ、というものがない。第3幕の五重唱では、呼吸が6/8拍子にはまっていない感じで始まるが、素敵なおじさま達が入ってくるとだんだんよくなってくる。

上から靴が降ってきたりと物議を醸す演出だったようで、終演後、ブラヴォーと同時にブーイングもたくさん出ていた。バイロイトの「マイスタージンガー」は何年も続かないことが多いが、こういう素敵な歌で聴けるならぜひ続けてほしいと思う。

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